対人関係論 (interpersonal theory)

 対人関係論はアメリカの精神科医H.S.サリヴァンによって提唱されました。
 対人関係論は、発達に伴い関わった主要な保護者、友人などとの交流が、発達に影響を及ぼすという考え方です。

他者との交流と体験の基礎様式としての対応づけ過程

 外界と接触することで生じる内的な状態変化、他者との交流の基本となる体験様式をサリヴァンは対応付け過程と呼びプロトタクシス、パラタクシス、シンタクシスの3つに区分しました。これらの体験様式は、プロトタクシス、パラタクシス、シンタクシスという順序で発達していきます。
 プロトタクシスとは、幼児的・非対人的な体験様式です。その場限りの体験に支配され、自己と他者の境界が曖昧で、体験に連続性がありません。
 パラタクシスとは、一様な体験世界から特徴的なパターンを見出して対象を弁別します。象徴を用いて体験世界を連続性のあるものとして組織化する段階にある体験様式です。自己の知識(自己概念)と経験が一致しておらず、『転移・投影』などの防衛機制によって、他者との感情的コミュニケーションを歪めます。サリヴァンはこのパラタクシス的な対人関係を意識することが治療過程の第一関門であると考えました。象徴の使用に共人間的有効妥当性確認(自分の存在が脅威に脅かされる心配無しに、自己を表現し互いの経験を分かちあうこと)がなされると社会化が起こりコミュニケーションの歪みが解消されます。
 シンタクシスとは、適応的・現実的な体験様式です。現実検討能力や共感性が発達しており、自分の思考・感情・態度・行動を外界にコミュニケーションにおいて適応させることができます。

関与しながらの観察

 関与しながらの観察というのは、治療者が患者の日常生活に参加して時間を共有しながら、患者の性格や行動パターンを明らかにしていく方法です。
 サリヴァンは対人関係の場と切り離した個性の客観的観察は不可能であると考えました。臨床面接の場ではパラタクシス的な体験の歪曲が生じやすく、未解決の過去の対人関係が反復される場となることがあります。それ故、サリヴァンの臨床面接は関与しながらの観察が中心となります。

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