S.フロイトの精神分析療法の創始に影響を与えたと考えられている症例です。
神経症の咳などの転換症状と解離状態を主症状とするヒステリー患者についての症例となります。
アンナ・Oという人物について
当初はJ.ブロイアーによって1880年から1882年まで治療されていました。
裕福な家庭で育ち、知的で魅力的な女性でありながら、気まぐれで言い出したら聞かないところがあったとされます。
ブロイアーとフロイトの共著である『ヒステリー研究』(1895)
発症の契機となった体験を話すことが解消に繋がったとされます。これをアンナ自身は談話療法と呼びました。
催眠療法を試みたブロイアーにより詳述されているのは、ブロイアーの手を擦ってからはじめて話し始めるなどの治療者との特別な対人関係の発展などです。
4期の病状
第1期:潜伏期
父親が重い病気にかかり、アンナ・Oは献身的に看病しましたが、やがて消耗し、看護もできなくなります。
第2期:顕在精神期
示していた症状には、
- 眼症状、運動麻痺と筋の拘縮、感覚脱失を伴う四肢の麻痺などの身体症状
- 文法の整わない自分流儀の言葉
- 人格が二重化し、正常人格と病的人格の分離
- 黒い蛇などの幻覚・緘黙症状・醒半睡状態
などがありました。
第3期:持続的夢遊病・正常状態交換期
1881年4月に父が亡くなると、アンナは混迷状態に陥り、さらに症状はさらに重くなります。拒食、不安発作と幻覚発作を起こします。
ブロイアーは毎夕刻に訪れて催眠を行いました。アンナ・Oは症状を彼に語り、そうすると症状が軽くなります。彼女自身はこれを「談話療法」あるいは「煙突掃除」と呼びました
第4期:よく知られた子犬のエピソードが語られる
アンナは水を飲むことを拒み渇きに苦しんでいました。ある催眠下で、このこと彼女の付き添いの女性の犬がコップから水を飲むのを見て、胸がむかついてから水を飲むのを難儀するようになったと語ります。このことをブロイアーに語り終えたとき、水を飲むことができ、その後、この症状は消失します。
話が原因となった症状に先立つ事件にまで及び、語り終えると症状は消えました。ブロイアーは、これらのことから各々の症状に対して催眠状態に導きます。過去の外傷体験を想起させる方法をとり、「話すことによって」次々と症状を消失させていきました。