分離・個体化理論 (separation-individuation theory)

 M.S.マーラーによって提唱されました。
 フロイトの心理性的発達論の口唇期から肛門期にかけての自我の発達の理論です
 マーラーは乳児が母親との一体感から徐々に分離していく過程を「分離・固体化」と呼びました。そして、母親との「正常な自閉期」「正常な共生期」を経た後での生じる「分離・個体期」を4つに分け、これを「分離―固体化理論」と提唱しました。

分離・個体化理論において区分される3期

Ⅰ期:正常な自閉期(0~1カ月)

 この時期の乳児は、内部と外部、自己と他者の区別がありません。心理的な反応よりも生理的反応が優勢です。

Ⅱ期:正常な共生期(1~6カ月)

 身体内部で起こっていることと外部で起こっていることを区別して経験し始めます。空腹感などは内部から生じ、欲求を満たすものは外部から与えられるというかすかな認識が芽生え始める時期です。この時期の自我は原初自我と呼ばれます。自己と他者との区別はまだつかないため、母子が一体感を経験する共生関係にある時期です。

Ⅲ期:分離―個体化期(6カ月~3歳)

 母子一体の分離が行われる時期で、以下の4つに下位区分されます。
①分化期(6~10カ月)
 自他の区別が可能になり、母親と他人、見慣れたものと見知らぬものとを比較し、人見知り反応が始まります。
②練習期(10~16カ月)
 身体的成熟によって、這う、膝へのよじ登り、つかまり立ちが可能となる初期練習期と、自由に直立歩行が可能となる固有の練習機に分けられます。母親から一時的に離れては遊び、また母親の下に戻り、あたかもエネルギーを補給してまた離れるという分離を練習する時期です。
③再接近期(16~25カ月)
 自由な一人歩きが可能となり、身体分離が意識されるとともに、分離不安が増し、離れた対象として、母親の存在価値を経験するようになります。すなわち、幼児は母親を依存対象として眺め、その愛情と承認を強く求めるようになります。
④個の確立と情緒的対象恒常性の萌芽期(25~36カ月)
 幼児は、再び母との分離が受け入れ可能となり、さらに一層耐えられるようになります。これまでの原初的な対象関係、すなわち、さまざまな属性に基づいて別々な母親(良い母親、悪い母親)として表象として関係を心の中に作り上げるという部分対象関係を乗り越えて、母親という一個の人間を統合して母親表象が確立します。つまり、情緒的な対象恒常性が発達するのです。幼児は母親と離れていても、心の中に自分を支えてくれる母親像を持っているため、安定して母親の元を離れることができるようになります。

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