認知療法は、認知行動療法と総称される一群の治療アプローチの代表的なものです。
アメリカの精神科医A.T.ベックによって開発されました。
被治療者の考え方のスタイルを治療の標的とし、認知の変化を通して、情緒面、行動面の解決を図ります。認知療法では認知モデルに基づいて体系づけされています。個人の持つ考えや感情の中で不合理だったり不正確などして問題のある部分に着目し、心理的な健康を損なうものから健全なものへと変化させていきます。
認知の過程
理論の基礎には、「人間の感情は、ある出来事をどのように解釈するかによって決まる」という考えがあります。
感情や行動には自動的に浮かんでくる思考(自動思考)が伴っている場合が多いです。その思考の背景・個人の考え方に特定の方向性を与える価値観や人生観の総体(スキーマ)が関わります。「自分は駄目な人間だ」「自分は失敗者だ」という破滅的なスキーマを持っている場合は、その影響で認知のゆがみが生じてくるのです。
認知のゆがみが極端になるほど、現実に適応しにくくなり、自動思考に悪影響を与えます。その結果、行動、感情、動機の障害が生じ、悪循環に陥ると考えられています。
認知療法の目的
不適切な自動思考に注意を向けて変えていくことが目的です。それにより不安になっても必要以上に騒ぎを大きくしなくて済むようにします。
自動思考の一定のパターンを見出すことは、極端なスキーマが見当できれば治療効果をより高め、再発防止にも役立ちます。
認知療法が適用される一例
- うつ病
- パニック障害
- 近年は摂食障害やパーソナリティ障害などにも適用
治療の過程
認知療法は問題思考的な治療法です。
治療初期には問題リストを作ります。
更に、認知療法の観点から見た場合に患者の問題の成り立ち、どのような介入方法が効果的か仮説を立てます。
ケースによって差はありますが、認知療法による一般的な治療は全体で10~20回くらいの短期的な治療になることが多いです。
最初は1~2週間に一度の頻度で行い、後半では次第に感覚を広げていきます。
また、治療が終了してから、数か月後にフォローアップのセッションを設けます。