ドゥンス・スコトゥス

 ドゥンス・スコトゥスは、スコットランドのマックストン生まれのフランシスコ会士です。オックスフォード大学で学んだ後に、オックスフォード、ケンブリッジ、パリ大学で教鞭を執りました。
 教皇権を擁護する主張をしたために、彼の考えは宗教改革においては嘲笑の的となりました。しかし、19世紀末頃より再評価の機運が高まり、それまで『オックスフォード講義録』の名で知られた主著『オルディナチオ』が刊行されました。

主意主義と主知主義

 スコトゥスは信仰に関して主意主義の立場をとりました。これは、トマス・アクィナスなどのとった主知主義とは相容れないものです。主意主義とは簡単に言えば、信仰に対して意志の力を重視する考え方、逆に主知主義とは知性を重視する考え方をいいます。
 アクィナスの主知主義においては、神の本質は存在であると限定されます。ところが、これは逆を言えば、神を知性的な存在であると決め付ける必要がないことも意味してしまいます。そこでスコトゥスは、知にこだわらずに神や人間が持つ意志の自由を重要視するべきだと主張しました。
 神を絶対者とするならば、神は絶対の自由意思を持つことになります。ゆえに、知的な合理性にも拘束されず、天地創造も神が欲したからにすぎないことになります。つまり、世界が生まれたことに何かしらの必然性があったわけではないというのです。
 さらにスコトゥスは、神の意志は理性よりも上位なものであり、合理的な神学というものはありえず、神学は基本的には実践的なものだとしました。

普遍的形相と個体的形相

 スコトゥスは、普遍というものについて、それは神のうちに概念として存在しているとしました。その上で、個物には普遍的性質をもたらす普遍的形相があるとしました。これはちょうど、プラトンの唱えたイデアに近い考え方です。
 しかし、スコトゥスの考えでは個物には普遍的形相に加えて、個々の間にある差を生み出す固体的形相があるとしました。
 例えば、Aという人間がいたとして、その人物はまず人間全体に当てはまる特徴である普遍的形相を持っています。けれど、それだけにとどまらず、Aをいう人物を他の人間とは違う存在にする特徴もあるはずです。このAという人物を他の人物と区別する特徴が個体的形相なのです。

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