アンセルムス

 アンセルムスは、イタリア北部のアオスタに生まれ、1078年にベック修道院長、1093年からはイギリスのカンタベリー大司教を務めました。「第二のアウグスティヌス」や「スコラ学の父」とも呼ばれる人物で、アウグスティヌスとスコラ哲学を結ぶ者として重要な思想家とされています。
 主な著作には、『プロスロギオン』『真理について』『選択と自由について』『神はなぜ人となられたか』などがあります。
 彼は、普遍論争においては実在論者の立場をとりました。

実在論

 実在論とは、普遍論争における立場の一つで、対立する立場にはウィリアム・オッカムなどが唱えた唯名論があります。普遍論争とは、「普遍は存在するか」という問題についての哲学や神学における論争をいいます。
 実在論によれば、すべての人は「原罪を持つ者」という本質を共有し、「原罪を持つ者」という概念は人類全体にあてはまるとされます。

知解を求める信仰

 アンセルムスの思想は、「知解を求める信仰」「知らんがためにわれ信ず」という言葉で知られています。彼は、信仰と理性の一致を確信し、信仰の根拠を理性的に証明できると考えていました。
 さらに、著書『プロスロギオン』の中では神の存在論的証明を唱えました。これは神という観念が存在するという事実が、神の存在を証明するという考え方です。
 アンセルムスは、まず大前提として、神は最大にして完全なるものと考えました。しかし、この神が人間の心の中にしか存在しないのならば、神は完全とは言えなくなります。なぜならば、一般に人間の理解の内にあるだけではなく、実際に存在する方が、より大きいといえるからです。したがって、まず、心の外に完全なる神が存在するはずであるという結論にアンセルムスは至りました。

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