スコラ哲学

 ここでいうスコラ哲学とは、12世紀末から13世紀初頭に成立した「大学」という教育機関を中心とした哲学を指します。
 スコラ哲学の「スコラ」(Scola)とはラテン語で「学校」を意味する言葉です。つまりスコラ哲学は学校哲学を意味するのです。
 スコラ哲学は、東方から浸透してきたアリストテレス哲学に大きな影響を受けています。アリストテレス哲学は、ほとんどの学問分野に及びました。スコラ哲学の担い手であったキリスト教神学者たちもアリストテレス哲学を無視しての探究は不可能でした。

スコラ哲学の主な哲学者たち

 スコラ哲学の主な哲学者として、以下のような人物が挙げられます。

  • トマス・アクィナス
  • ドゥンス・スコトゥス
  • アンセルムス
  • ウィリアムのオッカム
  • アヴェラール
  • ボナヴェントゥラ
  • ロジャー・ベーコン
  • エックハルト
  • ゾイゼ
  • タウラ

アリストテレス哲学の影響

 12世紀に入ると、教会を頂点としたヨーロッパの封建体制はすっかり安定していました。そんな中で、キリスト教による十字軍のエルサレムへの遠征が起こります。これがきっかけとなり、ヨーロッパはイスラム圏の文化に触れることになり、当時のイスラム圏に広まっていたアリストテレス哲学がヨーロッパ文化に入ってきました。
 アリストテレス哲学は、キリスト教の教義とは相当に異なる内容を有します。しかし、キリスト教的な世界観に匹敵しうるだけの高度な体系を備えていました。無視していては、教会の地位に対する脅威になりかねません。キリスト教徒は、自身が信じる教義体系とアリストテレス哲学は、どちらが優れているのかという問題に直面します。
 こうして、キリスト教の教義とアリストテレス哲学を上手く両立させる必要が生じました。スコラ哲学の中では、この問題が大きく論じられることとなりました。この問題において、最大の功績を上げたと言われるのがトマス・アクィナスです。

普遍論争

 普遍論争とは、スコラ哲学において「普遍は存在するか」という問題についての哲学や神学における論争をいいます。
「普遍は存在するか」という普遍論争の発端は、新プラトン主義のポルピュリオスの『エイサゴーゲー』において提起された問いにまで遡ります。
『エイサゴーゲー』の冒頭では、類・種・種差・固有性・付帯性という5つの普遍についての問題が提起されています。ここでいう普遍とは、すべての事物に共通する特徴のことをいいます。
『エイサゴーゲー』で提起されている問題は以下の通りです。

  • 類や種は真に実在するのか、それとも心的なものにすぎないのか
  • もし存在するなら、それらは物体的であるのか、それとも非物体的であるのか
  • それらは可感的事物から切り離されているのか、組み込まれているのか

 これらの問題にポルピュリオス自身は答えず、中世までその問題が残されたのです。
 中世の普遍論争においては、普遍はもの(res)か名前(nomen)かなどが議論されました。普遍をものと捉える人々は実在論者(reales)、名前と捉える人々は唯名論者(nominales)と呼ばれました。実在論者の代表的な人物にはアンセルムス、唯名論者の代表的な人物にはウィリアム・オッカムがいます。また、アリストテレス哲学によって、実在論と唯名論の調停を試みた人物にはアヴェラールがいます。

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