ウィリアム・オッカム

 ウィリアム・オッカムは、ロンドン近郊のサリー州オッカムに生まれました。フランシスコ会に入り、オックスフォード大学で神学を学んだ後に、同大学で教鞭を執りました。
 論理学や自然学を研究し、著書には『論理学大全』などがあります。
 彼は、個物の方が普遍よりも上位にあり、普遍は単に概念でしかないという唯名論を展開しました。
 1323年に異端として告発されてから、教皇とフランシスコ会からは破門されましたが、ミュンヘンで反教皇側の理論家として活躍しました。

唯名論

 オッカムは、ドゥンス・スコトゥスと同じく、神は全能の意志の持ち主であると考えました。そして、スコトゥスの主張を推し進め唯名論の立場をとりました。
 唯名論とは、普遍は実在せず、存在するのは個物だけであるという考え方です。唯名論では、普遍は多くの物事を表す記号や名にすぎないとされます。
 オッカムによれば、個物は相互に何の共通点も持たず、すべてが独自的な存在とされます。プラトンのイデア論に代表されるすべてに当てはまる普遍的本質は認識できないとしました。つまり、多くの個物に用いられる「人間」という名称はあっても、人間に関する普遍的な本質が存在するわけではないとしたのです。

オッカムの剃刀

 オッカムの剃刀とは、オッカムの思想の基本的な指針をいいます。
 唯名論の立場をとったオッカムは、普遍は名があるだけで実際に存在するわけではないとしました。普遍という存在を個物以外に設定する実在論を無駄な髪に例えて、実在論は「オッカムの剃刀」で切り落とさなければならないと唱えました。
 オッカムは、経験から導き出される直感的知識を重視し、真に実在するものは個物だけであるとしました。更に、経験から導き出される直感的知識が基礎ではない神学は無効であると考えました。認識可能なもののみを存在とみなすオッカムの思想は、意識を存在の原理とし、知識の根拠を認識以外に求めない近代哲学へとつながっていきます。

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