局所論 (topography)

 S.フロイトによって提唱された、メタ心理学的観点の一つです。
 人間の心は意識、前意識、無意識からなるという考え方です。これらの3つの領域は意識性の違いにより区別されます。
 無意識の存在を前提とする局所論は、精神分析を論じていく上での拠り所となる理論です。
 局所論は、フロイトが後に提唱した構造論的観点によって補われました。

意識、前意識、無意識

 意識、前意識、無意識についてざっくりと説明します。
 意識とは、本人に意識されている心的内容が存在している領域です。
 前意識とは、その時点では意識されていないけれど、注意を向ければ意識することが可能な心的内容が存在している領域です。
 無意識とは、抑圧された心的内容が存在している領域です。意識しようとしても意識できません。

3つの領域のそれぞれの間

 意識、前意識、無意識の間には検閲が働きます。検閲が働くことにより、無意識の心的内容がそのまま意識に到達することは妨げられます。
 意識にあったものを無意識に押し込めてしまう心の働きを抑圧といいます。
 逆に、無意識の心的内容が意識できるようになることを意識化といいます。意識化には故意的に行うものと偶発的に生じるものがあります。故意的に行うものの例が自由連想法などを用いた神経症の治療です。一方、偶発的に生じる意識化の例には失錯行為があります。
 失錯行為とは、言い間違いや度忘れなどのように、最初の意図が達成されないで、途中で意識しないうちに他の行為にとって代わられるものをいいます。失錯行為が生じる原因は、無意識的な願望や本能的衝動が、葛藤の結果、歪んだ形で意識化したからであるとフロイトは考えました。例えば、誰かの名前を呼び間違えたのは、その人の苗字が昔自分をいじめた人の苗字と似ているので、嫌な記憶を思い出すのを避けるために呼び間違えたのかもしれません。

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