S.フロイトが定義したもので、精神分析(主に局所論)で用いられる概念です。
通常は意識に昇らないが、努力すれば意識化できる記憶等が、貯蔵されている領域を指します。
前意識と無意識の違い
意識に上らない潜在的な思考は、前意識的なものと無意識的なものの2種類あるとフロイトは言います。前意識的な思考は意識に上るのを抑える力が弱々しく、力を得ると意識的になります。一方で、どんなに強かろうと、意識に突入してこない潜在的思考は無意識に分類されます。
前意識の働き
前意識は、意識と無意識との間に存在すると考えられています。
前意識は、抑圧されているものを無意識の領域に維持しようとします。これを検閲と言います。抑圧を取り除くには一定以上の力が必要です。
一方で、前意識で起こった情動は二次過程のコントロール下におかれます。二次過程とは、現実に従い、現実に適合するように欲動の充足を延期・調整する心の機能です。
フロイトはさらに、前意識は夢以外の無意識の形成物、すなわち症状、機知、言い間違い、失錯行為において妥協の創造を確固たるものにする、と明言しました。彼はこの時代には「精神療法は、前意識の支配のもとに無意識を置くという道以外を歩むことはできない」と結論しています。
前意識と記憶
また前意識は、記憶の中枢であると考えられます。記憶とは常に意識しているものではありません。しかし、必要に応じて取りだせるものなので無意識にあるとは言い難いです。よって、記憶は意識と無意識の間である前意識に貯蔵されているということができるのです。