投影同一視 (projective identification)

 原始的防衛機制の一種です。
 M.クラインによって概念化されたものです。
 分裂した自分の悪い側面あるいは良い側面のいずれかを外界の対象に投影します。さらにその投影した自己の部分と、それを受け入れた外界の対象を同一視します。それにより、対象のものとして認知し、対応することで自分の願望や衝動を支配、統制しようとします。
 投影同一視は、様々な不安や衝動を分割排除し、悪い内的世界から良い部分を保護し維持するためになされます。たとえば、自己を脅かす「攻撃者との同一化」によって、恐怖を避ける場合もあります。

発生のメカニズム

 クラインは、妄想分裂ポジションにおいて、部分対象関係の世界が展開していると考えました。乳児は、自分に満足を与える乳房と欲求不満を与える乳房が同一のものであるということを認識できません。
 例えば、乳児は空腹になってすぐに乳房が与えられないと欲求不満にさらされます。そのときには死の本能から派生する破壊的な怒りを対象に向けます。さらに破壊的な自己と怒りの一部を分裂し対象の中に投げ入れて、迫害的な「悪い対象」を形成します。こうして投影同一視が生じるのです。

特徴

 この機制は、境界例や統合失調症の精神病理を理解する上で重要です。
 元々は病的もしくは原初的な心による幻想もしくは精神内界的な心的操作として着想された概念でした。しかし、現在、正常に発達した心にも存在する心的機制として概念拡張されつつあります。

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