ヘルベルト・マルクーゼ

 ヘルベルト・マルクーゼは、ドイツベルリンに生まれた哲学者です。フライブルク大学でフッサール、ハイデッガーの下、ヘーゲルやマルクスを研究しました。
 1933年からはフランクフルトの社会研究所につとめ、フランクフルト学派の一員となりました。しかし、1934年、ユダヤ系だった彼はナチスの迫害を避けるためにアメリカへの亡命し、1940年に帰化しました。

一次元的人間と否定の力

 一次元的人間とは、マルクーゼの著作のタイトルであり、その中で論じられた言葉です。現代社会において出現した批判的思考を喪失した人間を指しています。
 マルクーゼは理性が目の前に与えられた現実を克服するためには否定の力が必要であると述べています。ところが産業社会における人間は、管理システムの中で既存の現実に同化してしまいます。こうして人は否定の力を失い、一次元的な存在になっていきます。
 一次元的人間からは、自由や個性、権力に対する批判や自己決定を行う能力が喪失しています。彼らは人間の願望や理念、欲求を操作する一次元的な社会に埋没していきます。
 一次元的人間が誕生する背景としては以下のものがあげれれます。

  • 科学技術への信仰と合理性のイデオロギー
  • 広告で宣伝される大衆文化と、それによってもたらされる消費至上のイデオロギー

 マルクーゼは更に、資本主義社会においても絶対的な否定勢力として存在してきた労働者階級すらを社会の体制に組み込まれてしまったとしました。そして、これらが資本主義体制を磐石化し、変革を抑制し続けていると説きました。

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