ユルゲン・ハーバーマス

 ユルゲン・ハーバーマスは、ドイツの哲学者・社会哲学者・政治哲学者で、フランクフルト学派の第二世代にあたります。彼は、ホルクハイマーなどのフランクフルト学派の第一世代の批判理論を承継しつつもこれを批判しました。彼らによって道具的理性とされた理性の復権をハーバーマスは目指しました。

公共性の構造転換

 ハーバーマスの初期の代表作には『公共性の構造転換』があります。ここでいう公共性とは、サロンや喫茶店、あるいは新聞など人々が自由に意見を出しあえる場によって作られる市民的公共空間をいいます。
『公共性の構造転換』では福祉国家の成立によって、公共性がどのように変化したのかを分析しています。
 17世紀から18 世紀にかけての宮廷文化は衰退しました。一方で、都市におけるサロンや喫茶店が発展していきます。かつて宮殿で行われてきた貴族の社交とは違い、サロンの中では、知性は王族など庇護者への奉仕ではなくなります。そこでは自由な意見を交わすことが可能でした。
 19世紀までは国家と社会は分離していたために市民的公共性は国家から自律していました。
 しかし、19世紀になると労働組合や労働者政党が組織されるようになり、多くの労働者の代表が議員となります。
 そして、20世紀には労働法や社会保障法などにより福祉国家が実現されます。これにより、人びとは行政サービスを受け取る側になります。こうなると、純粋に政府を批判するというより、自らの利権を守るために声を上げるようになります。結果として、議会は討論ではなく利害調整の場になったとハーバーマスは指摘しました。

コミュニケーション的行為の理論

 ハーバーマスは更に、アメリカ社会学の成果も取り入れ、コミュニケーション行為の観点から、社会を分析するという方法を強く打ち出しています。
 彼は社会を成立させているのは、人々のコミュニケーションのあり方だと指摘しました。人々の対話により作り出される相互了解こそが合理性を持つという観点を打ち出し、官僚組織が一般大衆に干渉し対話による合理性を歪めることを批判しました。

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