ジャン・ボードリヤール

 ボードリヤールは、フランスの思想家です。ジャーナリストからパリ大学の社会学教授を経て、思想活動の道へと入っていきます。
 彼は、大衆社会を生産と消費の両面から記号論的に分析する社会論を展開します。高度産業社会で「もの」の消費が生活の必要を離れていく現実を背景に、意味を持った記号としての「もの」が言葉のように交換されていることの意味を読解しました。

消費社会の問題点

 ソシュールは言葉の意味を他の言葉との差異で決まると考えました。この考えを応用して、ボードリヤールは、記号としての商品の意味は他の商品との差異で決まると分析しました。
 消費社会の最大の問題点は、消費社会のシステムがあらゆる超越的な価値を吸収してしまうことだとボードリヤールは指摘しました。
 本来は市場経済とは無縁であるはずの政治的理想や宗教も、消費社会においては消費される「記号」になってしまいます。要するに全てのものが消費社会では商品化されてしまうのです。

シミュラークル

 シミュラークルとは、表象やイメージ全般を指す言葉です。ボードリヤールは、実存物を再現する「表象作用」に対して、オリジナルのないままにコピーを作る働きを「シミュレーション」と呼び、そのコピーを「シミュラークル」と呼びました。
 シミュラークルの例としては、実体のない記号としてのブランド品などがあります。この場合、ものではなくブランド品というイメージが大量生産されているということになります。現代においては「モデル/複製品」という構図は失われ、すべてか初めから複製品として作られ、流通しています。

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする