心の構造

 C.G.ユングは心に層構造を想定しました。
 S.フロイトの考えでは、心は意識と無意識に大別されます。しかし、ユングは無意識について更に、個人的な経験に由来すると個人的無意識と、個人的な経験を超えた普遍的無意識に区別しました。

意識

 意識とは、自分を自分であると認識する機能をいいます。そして、この「私の」「私が」という主体、つまり人間の行為や意識の主体を自我といいます。
 自我は様々な働きをしています。
 自我はまず外界の知覚をしていて、視覚や聴覚などの感覚を通して外界を認知します。次に自我は内界の認知もしていて、自分の内的や欲望や聴覚などを知覚します。
 更に、これらの経験を記憶として体系化し保存する機能も担っています。ただし、記憶体型に基づいて知覚したものに判断を下している反面、新しい知覚に基づいて、記憶体系が改変されることもあります。

個人的無意識

 個人的無意識とは、一人一人の人間によって差異のある個別の無意識をいいます。個人的無意識は、無意識の層として比較的浅い部分に存在します。意識の直下にあるため、個人的な色合いが強くなります。
 個人的無意識の機能には、個人の自我を種々の不快な記憶や苦痛な刺激となる欲求から防衛するなどがあります。つまり、個人の体験の中で、意識の枠組みから締め出されたり、はみ出したものが個人的無意識にあるとされるのです。

集合的無意識

 普遍的無意識ともいいます。集合的無意識は個人的無意識より深い層で、人間に生得的に備わっている心の奥底にある無意識をいいます。
 集合的無意識では、人類に共通したイメージや内容を有します。そこでのイメージは経験的な日常生活での具体的事物とは独立に自律的に働きます。精神病の患者が、彼を取り巻く外的な状況に対して重篤な症状を出している場合は、集合的無意識が働いていたりします。
 ユングは時間的、地域的につながりのない土地の神話や昔話、夢、宗教説話、さらには精神病患者の幻覚や妄想の中の共通のモチーフを見出しました。彼はこれを元型と呼び、集合的無意識の内容は元型によって形作られていると考えました。

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