エマニュエル・レヴィナス

 エマニュエル・レヴィナスは、フランスの哲学者です。世界や他者を自分なりに意味づけする従来の思想を批判しました。その上で、他者の「顔」を意識することから始まる倫理を唱えました。
 代表的な著作には『全体性と無限』があります。

 世界全体を一つの意味のもとに把握しようとするキリスト教に象徴される試みを、レヴィナスは全体性の形而上学と呼び批判しました。「私」という存在は、世界や他者を意味づけすることで主体となろうとしますが、「私」という存在はそもそも世界全体の一部にすぎません。
 一方でレヴィナスの思想では、他人の「顔」によって「私」という存在は羞恥を覚えます。それにより、自分を空にして「顔」に無限に応えます。それにより、主体としての「私」という存在が生まれるのです。
 レヴィナスの思想は、1990年代になってデリダを初めとするフランスの哲学者の倫理の思索へのシフトを引き起こしました。

イリヤ

 イリヤとは、元々はフランス語で「~がある」という意味です。レヴィナスはイリヤを誰でもない存在がただあるというイメージの表現に使いました。
 レヴィナスは不眠に陥っているとき、目覚めているのは夜であるという比喩を用いてイリヤを説明します。「私」という存在は眠ろうと思っているのだから、このとき目覚めているのは私ではありません。不眠に陥っているとき、私の意志と存在ははずれてしまっています。では、この時存在するのは誰なのかというのがレヴィナスの問いでした。

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