ジュリア・クリステヴァは、フランスの記号学者・精神分析家です。
彼女はテクスト論で有名です。
混沌が意味を生成させるという点で、文学研究と精神分析に共通する見方を提示しました。つまり、記号は完結した意味を持つのではなく、常に意味を生み出そうとしているのです。
相互テクスト性
相互テクスト性とはクリステヴァが唱えた概念です。
これはバフチーンの対話原理の考え方を拡大したものです。対話原理は、テクストを読む・書くといった行為を対話という観点から捉え直した理論です。
クリステヴァは、テクストの中には複数の声があり、主体がテクストに対して取る位置によってテクストの意味は変化するとしました。
クリステヴァのこの見解は、構造主義の見方と比べると動的なものといえます。
おぞましきもの
クリステヴァは精神分析学の成果を生かし、おぞましきものについても分析しました。
おぞましきものとは、例えば穢れたものや嫌悪を催すものをいいます。穢れたものを感じるとき、人は自分が脅かされたように感じます。その理由は、自分が自分であるという同一性を脅かすことだとクリステヴァは考えました。
しかし、おぞましきものは、快楽と深く関係しています。人間にとって同一性が脅かされるのは恐怖であると同時に快楽でもあるのです。
同一性とおぞましきものの関係についての関係をクリステヴァは、文化と自然、父性原理と母性原理の対立として捉えました。
クリステヴァとフェミニズム
クリステヴァは、父性原理としてのキリスト教の批判を、父性原理をもったヨーロッパ文明の批判につなげました。その上で、母性原理としての自然を対立させます。彼女は、資本主義を父性原理として批判し、東洋への関心を強めました。
個の確立という考え方自体を疑う点でクリステヴァは単純なフェミニストではありません。しかし、精神分析の世界などを父性原理と母性原理の対立で説明する理論を提供したという点で現代のフェミニズムに影響を与えたと言えます。