アントニオ・ネグリは、マルクス主義哲学者です。イタリア出身ですが、政治運動との関わりで投獄されフランスに亡命しました。
彼は、ドゥルーズなどの問題提起を受け継ぎ、現代の国際秩序について新しい理解を示しました。
帝国
ネグリの権力論として有名なものに、現代の正解秩序を示す帝国という概念があります。
現代の「帝国」とは、唯一の帝国が他国を支配しているものではありません。
旧来の帝国モデルでは一つの巨大な強国が、その他の国々を従属させていました。しかし新しい帝国モデルでは、支配される側が自発的に支配に協力する仕組みが出来上がっています。そこには権力者なき権力関係があるのです。
この新しい帝国モデルは、特定の権力者がいないということで権力関係が成立するというフーコーの権力論と類似しています。しかし、ネグリの思想はフーコーよりも楽観的で、人々が自らの生きるここの現場で生の多様性を肯定するなら、この支配の形態から逃れられるとされています。