空海

 空海は平安時代初期の僧侶で、唐に渡って密教を学び、真言宗を開きました。真言宗は高野山と東寺を中心に拡がり、最澄の天台宗とともに平安時代の二大宗派となりました。
 また、空海は密教思想のみならず、美術や工芸など多方面にわたる唐の先進技術や情報を日本に伝えました。

密教

 密教とは、大乗仏教をベースにヒンドゥー教や土着信仰と結びついて七世紀頃に確立した秘密仏教をいいます。ここで言う「秘密」とは、一人の弟子に一人の師匠がついて教えを授けることが由縁となっています。
 インド密教は十三世紀に途絶えましたが、八世紀に伝来先の中国で真言宗となり、空海はそれを日本にもたらしました。
 密教では、言葉や理論だけではなく、仏と一体になる神秘体験を重視します。それは入我我入と呼ばれます。入我我入とは、仏が我に入り、我が仏に入るということを意味しています。

真言宗

 真言宗は、平安時代初期に空海が開いた密教の宗派をいいます。
 空海は816年に天皇からの許可を得て、高野山に真言密教の修禅場を開きます。823年には東寺を天皇から賜って根本道場とし、真言宗を一つの宗派として確立しました。
 真言宗の教えでは、人間が現世においてそのまま仏になれるとする即身成仏の思想を特徴とします。即身成仏の過程には、三密や荒行などがあります。
 三密とは、即身成仏を実現するための修行をいい、以下の三つを総称です。
・身密:手で仏の印を結ぶこと
・口密:仏の言葉である真言を唱えること
・意密:瞑想して心に大日如来を思い描くこと

十住心

 空海は人間の心の発達段階を十段階にまとめ、十住心と名づけました。
 十住心の各段階は以下の通りです。
・第一住心:倫理もなしに本能のまま生きている状態
・第二住心:日常的な倫理に目覚めた状態
・第三住心:救済を求める宗教心が目覚めた状態
・第四住心:実体的な自我を否定して無我を知った状態
・第五住心:万物の因縁を知り一人悟りを得た状態
・第六住心:すべての人々に慈悲心を持った状態
・第七住心:すべては空であると悟り実在への迷いをなくした状態
・第八住心:すべてのものが清浄であり真実であると悟った状態
・第九住心:すべての対立を超えて現実も理想も同じだと悟った状態
・第十住心:世界の真の姿を見てあらゆる価値が実現された状態

四度加行

 四度加行とは、密教では四段階の修行をいいます。この修行を通して、大日如来を初めとする諸仏と一体になる経験を重ねます。これらの修行を極めると、密教における師の位である阿闍梨を授けられます。
 四度加行の修行は以下の通りです。
・十八道行法:行車が本尊をもてなす準備をする
・金剛界行法:金剛界曼荼羅を本尊とし一体となる
・胎蔵界行法:胎蔵界曼荼羅を本尊とし一体となる
・護摩行法:護摩を通じて仏と一体になる

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