力動論 (dynamic)

 S.フロイトの提唱したメタ心理学の理論の一つです。
 力動論(心的力動論)とは、心のエネルギーが愛、憎しみ、欲望などへ変化し、それらが相互に作用することであらゆる心的メカニズムが生まれる、という考え方です。
 とりわけ、愛情と攻撃性、欲望とその禁止など、反対方向に働くエネルギー同士の葛藤や、分析家や他者といった対象へのエネルギーの転移に着目することが、心理力動論の大きな特徴をなしています。

力動論とフロイト

 フロイトは、無意識の概念において力動的な観点を特別に重視しています。
 無意識と前意識は境界のない連続したもののように思えるかもしれません。しかし、無意識に関するフロイトの定義を決定づけるものは抑圧です。抑圧とは他方と両立しえない感情や欲動などが抑圧によって意識の外へと押しやられることです。つまり力動論は、緊迫したさまざまな力、力と力の葛藤に関する理論を前提としているのです。
 力動的な観点は、フロイトが治療に際して起きる抵抗(無意識の内容が意識化されるのを被治療者が拒むこと)などに最初からどれほど重点を置いてきたかということの証です。

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