原始的理想化 (primitive idealization)

 原始的防衛機制の一種です。
 M.クラインが提唱しました。
 乳幼児の発達早期の「妄想・分裂ポジション」で発生します。
 対象や自己を分裂させ、一方をすべて良い理想化されたものとし、他方をすべて悪いものとして価値のないものとみなすことをいいます。
 基本的な機能とし、外的対象を非現実的にすべて良いものとみなすことによって、そこに悪い側面が侵入し、その対象を汚し、破壊することを防止することにあります。

原始的理想化の形成

 原始的理想化は、後に「妄想・分裂ポジション」が理論化されたときに、重要な防衛機制の1つとして挙げられています。「妄想・分裂ポジション」、生後直後から4~5カ月まで見られる早期の心の状態です。
 この時期の赤ん坊は、母親の乳房や顔などが同一人物に属していることを認識できません。これを部分対象関係といいます。
 たとえば空腹の場合、すぐに乳房が現れないときに赤ん坊は欲求不満に陥ると、死の本能から生じる破壊性や怒りを対象に向けます。さらにその破壊的な自己を対象に投影して破壊的な悪い対象を形成します。そして、そのような外的な悪い対象から攻撃されるという迫害的不安におびえるようになります。
 逆に満足を与える乳房などの部分対象に対しては、生の本能から生じる愛を対象に向けます。その一部は分裂排除して「良い対象」を形成し、「理想化」して激しい愛を向けます。そして赤ん坊はそのような理想的な「良い対象」を取り入れて自己の核を形成していきます。
「妄想・分裂ポジション」の次の段階である「抑うつポジション」においても緩和された理想化の機制は活動しています。

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