研究活動 (research)

「実践と通しての研究」と、「実践に関する研究」を循環的に行い、理論や援助モデルを作る活動です。
「実践と通しての研究」は主に理論やモデルの構成を行う研究です。一方で「実践に関する研究」は構成した理論やモデルが正しいかを検証する研究です。

研究活動の意義

 臨床心理学が真の意味で社会的に役立ち、専門活動として社会に根付いていくためには、心理療法などの実践活動を行うだけではいけません。
 現場の実践をまとめて、広く使っていける理論や援助モデルをつくっていく必要があります。
 また、つくった理論や援助モデルが実施に役に立つのかということを確かめる作業を怠ってはなりません。
 研究活動を行って、実践活動で得られた知識なり事実をまとめることで、はじめて他の社会活動との協同作業が可能となります。

臨床心理学研究の方法

 臨床心理学研究の方は、大きく分けて「実験法」「調査法」「治療実践に基づく臨床研究」の三つがあります。

実験法

 実験室で特定の調べたいことを、特定の状況下で調べていく方法です。

調査法

 知能検査や人格検査などから発展した方法で、収拾した情報を整理していきます。

治療実践に基づく臨床研究

 個別の事例に対する実践活動を具体的に記録していくやり方です。つまり現場で起こったことを研究対象としているわけです。

科学性と実践性

 以上の3つの方法を挙げましたが、性質的には、実験法と調査法は科学性を重視するやりかたといえます。この2つは統計などによって結果を、数字を使って表せるからです。数字で見られるということは、それだけ客観的に評価できる、つまり科学的であるという風に捉えます。専門的にはこれを「量的研究」とよびます。
 一方で、治療実践に基づく臨床研究は、実践性を重視した研究方法といえます。複雑な要素が絡み合う実践活動での情報をベースにしているので、統計を用いたり、数字で表すのが難しい部分があります。しかし、その反面、現場であったことを元にしているので、新しい理論や治療モデルに関する仮説をつくっていくのは得意です。専門的にはこれを「質的研究」とよびます。
 実践性重視の研究と、科学性重視の研究は、一見すると相反する様ですが、そうではなく、お互いを補いあえる関係といます。実践性重視の研究により理論や援助モデルの仮説を立て、科学性重視の研究によって、その仮説が本当に正しいのかを検証していく。実践を通しての研究と、実践に関する研究を上手く組み合わせることで、より良い臨床心理学研究が可能となるのです。

「仮説生成型研究」と「仮説検証型研究」

 研究は「仮説生成型研究」と「仮説検証型研究」の観点から分類することもできます。

仮説生成型研究(ボトムアップ的研究)

 仮説とつくることを目的とする研究です。研究対象者にとっての行為、経験、考え、意味を追求します。
 仮説生成型研究は、研究者は予め結果を想定せずに行われます。
 環境や条件を人為的に整えた実験室でデータ採取を行わず、できるだけ自然な状況得られるように面接や観察を行います。
 また、当事者の体験をその人自身の言葉で語ってデータ採取を行います。当事者に自由にありのままに体験を語ってもらうことで、研究者が想定していなかった新たな発見に繋がることもあります。
 仮説生成型研究の非数量的研究を指して、狭義の質的研究といいます。

仮説検証型研究(トップダウン的研究)

 既に存在する研究に基づいて仮説を想定し、それを検証するために行われる研究です。
 仮説検証型研究は、既存の理論をより精緻なものへ発展させたり、逆に既存の理論への反論を提出するために行われます。

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