質的研究(定性的研究) (qualitative research)

 量的研究と対をなす研究法です。
 主に記述的なデータを用いて言語的・概念的な分析を行います。
 実験や測定を行わず、データを数値で表さない研究は、広い意味では質的研究となります。
 質的研究の利点は、数字では表せない現象を明らかにできることです。臨床心理学は、人々が体験したことや、語ることと密接に関わる学問です。そのため情報を全て数値で表すことには無理があります。そのため質的研究は臨床心理学の分野に積極的に取り入れられています。

質的研究の種類

 質的研究の種類には以下のようなものがあります。

事例研究

 事例研究とは、1つまたは少数の事例を元に、それぞれの事例の個性を尊重し、研究していく方法です。事例研究では、扱う事例を細かく情報収集し、その事例の特徴や変化について分析・評価していきます。事例研究は、事例から得られた知見を臨床的・学術的に生かしていくために行われます。

フィールドワーク

 フィールドワークとは、ある対象について調査する場合、そのテーマに関する現地に実際に足を運び、対象を直接観察、関係者から意見を聞き取るなどする調査方法です。
 元々は、人類学者がエスノグラフィー(民族誌)を書くために開発された研究手法です。
 研究者が調査対象の集団に参加し、そこで一員として役割を演じながら観察を行うことです。
 心理学においては1990年頃から研究法の一つとして認知されはじめました。

会話分析

 会話分析とは、実際の会話の音声を書き起こし、会話の手続きの分析を行う手法をいいます。
 会話分析は、人間が会話を行うことは、それ自体が組織立った種々の手続きによって成り立っていることに着目した技法です。

ナラティブ分析

 ナラティブ分析とは、研究対象の物語を分析する手法をいいます。ナラティブ分析では、研究対象者が語る自らの経験や人生に着目し、物語(ナラティブ)を読み解いていきます。

広義の質的研究と狭義の質的研究

広義の質的研究

 広義の質的研究とは、数量的測定によらない研究を指す言葉です。

狭義の質的研究

 広義の質的研究とは、数量的測定によらず、かつ仮説生成型の研究をさします。

質的研究を行う際の留意点

論旨の一貫性

 研究設問、問いに答えるための方法(データ収集と分析)、得られた結果が論文の主張と一貫するように研究デザインに配慮する必要があります。

分析過程の記録と記述

 分析過程と記録しておき、論文執筆する際にそれを記述する必要があります。これは後々、質的研究が適切な手順を踏んでいるかを確かめる資料となります。

分析結果の適用範囲

 質的研究のデータの採集元は比較的少数です。従って、分析結果の適用範囲には限界があります。

倫理的問題

 質的研究は研究協力者に心理的・物理的に与える影響が大きいことである点を認識する必要があります。研究協力者のプライバシー保護には細心の注意を払わなければなりません。

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