量的研究(定量的研究) (quantitative research)

 質的研究と対をなす概念です。
 主に数量的なデータを用いて、数値を用いた分析、記述を行う研究を指します。
 心理学の研究は客観的に見て正しいことが求められます。研究者が「私はこう考えました」というだけでは単なるアイデアの提示でしかありません。
 数量的なデータに基づいて実験や調査を分析・評価することは、研究者の考えの正否を客観的に示すことに有効です。

量的調査研究

 量的調査研究とは、実験のように現実場面操作を加えずに、研究対象の特性を数量的に分析・評価する方法です。
 量的調査研究は一般的に以下の手順で進められます。
①テーマについての仮説を立てる
 研究者が関心を持っているテーマについての暫定的な説明や仮説を導き出します。
②仮説の内容を変数を用いて記述する
 変数とは、何らかの数値化によって数量として測定できるものをいいます。
 例えば、ストレスの大きさは本来数字で表せるものではありません。しかし「全くストレスを感じない」「まあまあストレスをを感じる」「凄くストレスを感じる」という選択肢をつくったとします。更にこれらの選択肢に対して、「全くストレスを感じない」なら0点、「まあまあストレスをを感じる」なら1点、「凄くストレスを感じる」なら2点という具合に得点を割り振ったとします。こうすることでストレスの大きさを数字で表せるようになります。この時のストレスの点数が変数となるわけです。
③サンプル(標本)の大きさを決定する
 サンプル(標本)とは、母集団に対する部分集合のことをいいます。
 統計的に何かのテーマを調査する場合、調べたい集団全体を調査することが不可能な場合がほとんどです。
 例えば、うつ傾向の強さと、その人が感じているストレスの強さを、②で作った変数を用いて数値で表したいとします。この調査をする場合、世界中の人すべてに質問するのは不可能です。こうした場合、ランダムに選んだうつ病の人に質問をして、一部分から得られたデータから全体の結果を予測することが有効です。
 統計調査は、料理の味見に比喩されることがあります。料理の味見をする際に、作った料理すべてを食べるわけにはいきません。料理の味見をする際には通常、料理を良くかき混ぜて少しの量の味をみます。
 この際の料理全体を母集団、味見に使う部分をサンプルです。
④データを収集する
 質問紙などを使って、サンプルとなった人に質問に答えてもらいます。母集団からサンプルを選ぶ際に重要なことは、実際に調査する対象をランダムに選ぶことです。
 例えば、うつ傾向の強さと感じるストレスの強さの傾向を調べたいのに、特定の集団(例えば会社の重役など)ばかりに質問をしても得られる結果は偏ってしまうでしょう。
 前述の料理の比喩で言えば、良くかき混ぜる作業がランダムに人を選ぶことに相当します。
⑤データを分析する
 調査から得られたデータにどのような傾向があるのかを吟味します。変数が2つの場合、相関関係や散布図を用いて把握することが基本となります。変数が3つ以上の場合には多量変数解析を用います。

実験研究

 実験研究は研究者が環境や条件を調整した状態で研究対象を調査する方法をいいます。
 実験研究と量的調査研究は、変数を設定して、その変数についてを分析するという点では共通しています。
 質的調査研究では、得られたデータの因果関係を判定することができませんが、実験研究では因果関係を判定することが可能です。
 例えば、調査研究でうつの傾向と感じているストレスの強さを調べたして、うつの傾向が高い人ほと感じているストレスも強かったという結果が出たとします。しかしこの場合、「うつだからストレス強く感じた」のか「ストレスが強いからうつになった」のかは判別できませ。けれど実験室などで強いストレスを与えた人々とそうでない場合の人々を比較すれば、ストレスがうつ傾向にどれだけの影響を与えるのかがはっきりします。
 臨床心理学では、心理療法の効果を評価するために実験研究がよく用いられます。実験研究では具体的な研究の枠組みを実験デザインとよびます。
 実験研究は一般的に以下の手順で進められます。
①実験仮説を立てる
 実験仮説とは、特定の変数を操作したとき生じられると考えられる事象です。
②操作可能な独立変数を選択する
 独立変数とは、研究者のコントロール下に置かれる要因です。
 例えばうつ傾向の強さと感じるストレスの強さを実験する際に、与えるストレスの強さを変化させたとします(例えば室温・湿度を高くする)。この場合、ストレスの強さが独立変数となります。一方で独立変数に伴って変化するであろうと考えられるうつ傾向の強さは従属変数と呼ばれます。
 研究者は複数の研究協力者を複数のグループに割り当てます(与えるストレスが強い・中ぐらい・弱いのグループなど)。
 この際に大切なのは、グループの割り当てをランダムに行うことです。
③実験を行う
 実験に際しては倫理的な配慮が必要です。研究協力者が実験参加を途中で辞退したいと言い出した場合、ペナルティなしでその申し出を受け入れるなどがそれに当たります。
④実験結果を分析する
 実験から得られたデータを分析します。独立変数によって従属変数に変化が見られた場合、グループの間に実験効果が現れたということができます。

量的研究の種類

 量的研究には以下のようなものがあります。

  • アナログ研究
  • 効果研究
  • アクションリサーチ
  • 一事例実験

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