アナログ研究 (analogue study)

 アナログ研究とは、大学生や一般人などの非臨床群(つまり患者ではない人々)を対象者として行う研究です。
「アナログ」というのは「等価な」「連続な」という意味の言葉です。アナログ研究の例としては、不安傾向の強い健常者を不安障害の人と等価とみなして研究するなど挙げられます。

アナログ研究の目的

 従来の臨書心理学研究では、臨床的な問題を抱えた当事者自身を研究対象とする臨床研究が中心でした。
 しかし、臨床研究では直接扱えない困難な心理的問題も存在します。その場合、非臨床群を対象にした研究から、臨床実践に役立つ知見を得ることがあります。
 また、病気とまではいかない心理的不調であっても看過してはいけない場合もあります。アナログ研究からそういった心理的不調を発見できることもあるため、非臨床群を扱うこと自体に意義があると言えます。

アナログ研究の特徴と利点

 アナログ研究でデータを集める対象者は対象者が非臨床群の一般的な人々です。そのため、臨床群である人からデータを集めるよりも多数の被験者のデータが収集できます。
 このような特徴は、以下のような利点に繋がります。

高度な統計手法が可能となる

 これにより、一般化できる程度の把握や因果関係へ一層接近できます。

臨床群との比較が可能

 これにより、特定の問題に関する臨床群と非臨床群の量的な差異や質的な差異を把握することができます。

多岐にわたる情報収集が可能

 これにより、特に調査協力者の要望に縛られず、研究者側が関心を持っているテーマについての情報収集が可能となりまます。

実験などを用いた条件や環境を調整した実験が可能

 これにより、臨床研究では明確になりにくい特定の要因や介入の影響についての厳密な因果関係を検討することが可能となります。

アナログ研究の用途

 アナログ研究の用途には以下のようなものがあります。

アセスメント(心理検査)の開発・標準化

 心理検査の開発には、得点の分布や回答パターンを吟味する必要がため、多数の被験者を必要とします。
 そのため、特に質問紙法の検査では非臨床群の多数の対象者に実施した上で、臨床群に実施し、得点の差異を確認する手段が一般的となっています。 

心理的問題の発生・維持のメカニズムの把握

 非臨床群のデータと比較することによって、臨床群の状態像をよりよく把握できるようになります。
 また、非臨床群を対象ととして認知にメカニズムなどを検証することで、臨床群の認知的異常のメカニズムを解明するなどが可能です。

心理的問題の発生や再発の予防的介入の開発

 日常生活で経験されるレベルの心理的問題について研究できるため、心理的問題の発生や再発予防に関する知見を得られます。

アナログ研究の限界

 アナログ研究には以下のような批判があります。

  • 非臨床群で得られた結果を安易に臨床群へと一般化するしてもいいのか
  • 臨床研究と比べ、当事者の個別性が反映されにくい

 そのため、アナログ研究を用いる場合には、こうした批判を限界点と意識する必要があります。そのうえで臨床研究などのその他の知見と統合していく視点が重要です。

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