質的研究の一つです。
元々は、人類学者がエスノグラフィー(民族誌)を書くために開発された研究手法です。
研究者が調査対象の集団に参加し、そこで一員として役割を演じながら観察を行うことです。
フィールドとは、調べようとしている出来事が起きている現場を意味する言葉です。
心理学においては1990年頃から研究法の一つとして認知されはじめました。
フィールドワークの手順
フィールドワークではデータの収集と分析を繰り返しながら、事例を研究するための仮説を生成していきます。
具体的な手順は以下の通りです。
①フィールドを決め、フィールドに入る
②フィールドの全体像を把握
③リサーチ・クエッション(仮説)を立てる
④観察対象を定めて集中的に観察する
⑤観察結果を読み解くための理論的枠組みの探索
⑥理論に導かれた事象の選択的観察を行う
⑦データを分析し、解釈する
(※ここで必要があるならば③まで戻って繰り返し仮説を生成する)
⑧エスノグラフィーを書き上げる
実践的フィールドワーク
実践的フィールドワークとは研究者が積極的に関与するタイプのフィールドワークです。
従来のフィールドワークでは研究者の存在が出来るだけ現実に影響を与ええないようにしながら対象を観察することが求められます。しかし、臨床心理学は実際に対象者にかかわり、変化をもたらすことを目指す学問であるため、実践的フィールドワークを行う場合もあります。
臨床心理学の研究者は、カウンセラーやグループの指導者を兼ねる場合が多く、実践的フィールドワークでは、特に研究者と対象者との関係が重要となります。
そのような場合、研究者は、参加者と観察者の役割を使い分けることが重要となります。
実践者であるということは、フィールドへの働きかけを通してより深いデータをとることができるという利点をもたらします。
一方でフィールドに参加しつつも、そこで生じる事象を常に観察者の視点で捉える必要もあります。研究者自身が、自分の存在がフィールドで起きている事例やデータ収集にどのような影響を与えているのかを考慮することが重要です。
フィールドワークの有効性
フィールドワークでは、対象者とより深い関わりを得られます。それにより、得られるデータからはより豊かな記述が行え、より妥当性の高い解釈を示すことができます。
またフィールドワークは現実の複雑さの中から、新たな問題を発見したり、仮説生成を行ったりすることに適しています。